小説のポケット

異世界の魔物との死闘を描くファンタジー小説

シャルヴィス異世界戦記9


自分の教室に戻り俺はおもむろに防具を装備する。
「俺独りで行く。二人はここに残っていてくれ。俺が戻らない場合は警察に連絡を頼む」
俺は小刻みに震えながらも、ぐっと握りこぶしを作っている。
「おいおい独りでなんて危ないだろ。また出たらどうするんだよ」
甚平がさも当たり前のように前に回りこむ。彩那も同じような事を言っている。
「危ないんだ・・・とにかくやつらは猛犬なんかの比じゃなく危ない」
魔物を見ていない甚平に危険性をできるだけ簡潔に話したが聞く耳をもたなかった。


「どうなっても知らないぞ」俺はとうとう折れ3人で行く事になった。
神社に近寄る前からもう臨戦態勢である。
甚平は野球部から借りてきたキャッチャーの一式に金属バットを装備している。
俺と彩那は近寄る前から剣道の武具を完全装備。
面も付けており彩那にいたっては違和感があるが竹刀を金属バットに変えている
竹刀では歯が立たないことは先刻の戦いでわかっていたらだ。
俺は木刀(硬い木で剣の形に加工したもの)を装備している。
神社の前までは少しだけ人とすれ違っただけで止められることはなかった。
神社の石段を登る鳥居の前に3人は立つ。
なにやら神社のあるあたりの上空に渦を巻いて紫色の煙が立ち込めているのが薄っすらと見えている。

シャルヴィス異世界戦記8

その後先生達も登校してきて案の定木刀装備の防具姿の俺は怒られた。
事情を話したがそんな話を信じてくれるはずは無く、
妄想の産物として処理されてしまった。
おとなしく着替えたが俺は木刀を傍に置いていた。


6時限目が終わりみんながクラブ活動、帰宅するものに分かれて散っていく中で、

俺は教室にぽつりと残っていた。
どうする・・・これからどうすればいいと自問自答していた。
そこに彩那と甚平が声をかけてきた。
一度神社にいってみるか?俺も何か武器になりそうなものもって加勢するぜ。
などと言っているがあそこに戻りたいとは思わない。
大体甚平は運動神経がよくても剣術はできない。
みすみす危険にされしたくはない。
かといって師匠が戻ってきて一人の時に襲われる所だと大変だ。
「そうだ!ちょっと職員室に行って来るは」
俺は言うか言わないかで教室を飛び出した
俺は事情を少しごまかして電話を借りた
電話であれば安全に師匠に連絡をつけれる。
しかし電話には誰もでない。
くそ、駄目か。一体どこいっちまったんだよ師匠。
やはりもう一度神社へ行くべきなのか。
偶然、突然変異した生物が神社に出ただけかもしれない・・
そう言い聞かせようとしたが自分の見た光景を払拭(ふっしょく)する程の根拠にはならなかった。

シャルヴィス異世界戦記7

彩那も何をしているのか察して隆治の横でじっと立っている。
隆治は防具袋を置き木刀を構えている。
木刀を持ち歩くことは禁止されているので先生に見つかるだけでも怒られるだろう。
しかしそんなことに構っているわけにはいかない。
いまの心理状況はそんな些細なことはどうでもいい。
さきほどの命のやり取りを思い出すと今でも血の気が引く思いだった。


朝練組みも結構増えて来てだんだんと賑やかになってきた。
その頃になると俺も力が抜けてきて上段で木刀を構えずいつでも攻撃態勢になれる程度に
握りなおしていた。
「おいおい隆治、おまえ番長にでもなる気かよ。あさっぱらから運動場で木刀持って」
ちゃかすように一人のクラスメイトが声をかけてきた。
陸上部の遠崎甚平(とおざきじんぺい)といい。                  
俺との付き合いも中学からと結構長い。
おちゃらけた性格で場を和ませるのが得意なので俺としてはよく助けてもらっている。
しかし甚平に声をかけられても俺の表情は穏やかにならない。
その辺を察したのか何かあったのかと真面目な顔に変わった。


ことのあらましを話したが何を寝ぼけた事を一笑されてしまった。
早起きしすぎて途中で夢とごっちゃになってるんじゃ無いのかと笑っている。
俺はマジだと言ってるのに笑い転げている。
しかし彩那が見たことを詳細に語ると笑いも止まった。
「その話がマジならやばいんじゃないのか・・・いつそいつらがまた出てきてもおかしくないんだろ?」
「やっぱり警察に電話しよ」彩那が懇願するように俺の袖をひっぱる
「いや・・甚平の態度からみて警察が信用するわけがない。いたずらだと決め付けられるに決まっている
せめて何か物的証拠があればいいんだが。」
残っているのはこの石のようなものだ。神社から離れると何故か光っていたのが消えている。
「その・・・なんだ、神社は今危険なのか高倉さんは大丈夫なのか?」


高倉さんというのは師匠である神主さんの苗字だ。

                             

「解らない・・・いつもいる朝稽古にも顔を出さないし居ないんだ」