小説のポケット

異世界の魔物との死闘を描くファンタジー小説

シャルヴィス異世界戦記7

彩那も何をしているのか察して隆治の横でじっと立っている。
隆治は防具袋を置き木刀を構えている。
木刀を持ち歩くことは禁止されているので先生に見つかるだけでも怒られるだろう。
しかしそんなことに構っているわけにはいかない。
いまの心理状況はそんな些細なことはどうでもいい。
さきほどの命のやり取りを思い出すと今でも血の気が引く思いだった。


朝練組みも結構増えて来てだんだんと賑やかになってきた。
その頃になると俺も力が抜けてきて上段で木刀を構えずいつでも攻撃態勢になれる程度に
握りなおしていた。
「おいおい隆治、おまえ番長にでもなる気かよ。あさっぱらから運動場で木刀持って」
ちゃかすように一人のクラスメイトが声をかけてきた。
陸上部の遠崎甚平(とおざきじんぺい)といい。                  
俺との付き合いも中学からと結構長い。
おちゃらけた性格で場を和ませるのが得意なので俺としてはよく助けてもらっている。
しかし甚平に声をかけられても俺の表情は穏やかにならない。
その辺を察したのか何かあったのかと真面目な顔に変わった。


ことのあらましを話したが何を寝ぼけた事を一笑されてしまった。
早起きしすぎて途中で夢とごっちゃになってるんじゃ無いのかと笑っている。
俺はマジだと言ってるのに笑い転げている。
しかし彩那が見たことを詳細に語ると笑いも止まった。
「その話がマジならやばいんじゃないのか・・・いつそいつらがまた出てきてもおかしくないんだろ?」
「やっぱり警察に電話しよ」彩那が懇願するように俺の袖をひっぱる
「いや・・甚平の態度からみて警察が信用するわけがない。いたずらだと決め付けられるに決まっている
せめて何か物的証拠があればいいんだが。」
残っているのはこの石のようなものだ。神社から離れると何故か光っていたのが消えている。
「その・・・なんだ、神社は今危険なのか高倉さんは大丈夫なのか?」


高倉さんというのは師匠である神主さんの苗字だ。

                             

「解らない・・・いつもいる朝稽古にも顔を出さないし居ないんだ」